今回は、町家を現代の住まいとして考えるときの課題を示し、町家再生を歴史的環境での修景事業としてとらえた時のすすめ方をお話します。
現代の住まいとしての町家の課題
(1)(2)については、町家の機能的なものと住まい手との課題であり、我々のような専門家との対話のなかで考えを整理できます。- (1)個人の生活空間としてのプライバシーの確保と、町家の特徴である、まち空間への連続性・開放性の両立をどう処理するかということ。
- (2)経済合理的に基づく機能性、効率性な間取りへの欲求と、町家のもつゆとり感、あいまい(ファジィ)空間の持つ多様性との折り合い。
- (3)私の好み(個性)の発揮=他者との差別化と考える人にとって、個の住まい(町家)も景観のひとつとして捉える考えに抵抗がないか、没個性と考えないかどうか。
すまいとしての町家再生では、これらの課題を、町家の機能的、文化的価値を正しく評価し、それらと現代的欲求をうまくかみあわせることで解決していくことになります。
(3)は、町家再生をまちなみの修景事業と捉えられるかどうかがポイントです。
周りと同じにしたくない。町家再生にも個性を発揮して、他との差別化を図りたいという考え自体はごく自然です。
しかし、そもそも何に町家の魅力を感じたかを思案し、他と差別化することが果たしてその魅力を高めることに作用するのかどうか考えてみる必要があります。
先述したように町家の特徴として、まち空間への連続性・開放性、ゆとり感、あいまい(ファジィ)空間の持つ多様性あります。
そしてそれを成り立たせている、それぞれ意味のある、様々なしつらいが形づくる、まちなみの連帯感があり、それらの中に魅力や価値が含まれているのです。
それ故に、そこに受け継がれてきた価値とは無関係に、他との差別化のために付け加えたり、改変したりすることは、町家の魅力をより高めることにはつながりません。
それは町家型モデルハウスを作ることです。
そうしないためには創造的修景の意識をもち、受け継がれてきた価値のなかにある、これから先も魅力を持ち続ける要素に現代の知恵を付け加える手法で町家再生を進めるのが有効です。
創造的修景によってまち全体の魅力が高まることで、個の豊かさもまた実現するという相互利益の考えをもち、単に個の充足感を得る場としてすまいを捉えるのではなく、景観の一部としての“いえ”と捉え、その存在そのものがまちの資産として価値を持ち得てこそ、町家再生の意味があるのです。
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