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2016年4月29日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(5)-創造的修景を考える-

修景において「ニ、個性を生かすこと」について引き続きお話します。

「創造的」という言葉から受ける印象は、強く自己主張をするものととらえられがちです。
 

似た意味で、「個性を生かす」ということが、「他者との差異を明確にする」と表現される例も見られます。
 

このように強く自己主張することや、他者との差異を明確にするために、とかく饒舌に表現することが、個性を生かすデザインだとする考えがあります。

個性的であるとは果たしてそれだけでしょうか。

私達はそのような饒舌さとは逆の、簡素さの中にも豊かな個性を見いだすことができます。

随筆家の寿岳章子氏は著書『湖北の光』の中で、彦根の夢京橋界隈のまちなみについて、「このまちなみの静謐さは、時を経てきた誇りに満ちている」と記しています。

静謐さのなかに誇りが満ちている。これがこのまちを訪れる人々が感じる彦根らしさのひとつなのではないでしょうか。 消去することにより住み手の個性が見えてきたり、まちへのやわらかい心遣いや愛情が伝わってくる景観があります。

付け加えることではなく、余分なものを消去することにより、その場の持つ美しさや豊かさが純粋さを増していると言えます。

まちなみの修景を考えるとき、そんな洗練された情景を思い描いてみてはどうでしょうか。
 

入り込んだ路地の建物(右側)と道路境界までのわずかな場をデザインすることで、まちなみの統一感を保ちながら、住み手の心遣いが感じられる個性豊かな場をつくる。 
囲われていた塀を車寄せのために取り払い、玄関前の前栽をまちなみに解放する。



 





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